受注率よりSales Velocityを見るべき理由
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受注率が上がれば、営業は強くなっている。そう考えていないでしょうか。けれども、受注率が高くても、案件が少なく、単価が低く、時間がかかりすぎるなら、売上はなかなか伸びません。
営業の力を、一つの数字で捉える方法があります。セールスベロシティ、つまり営業の売上の速度です。この記事では、その考え方と、営業責任者がどの要素を動かすべきかを整理します。
まず結論
セールスベロシティは、案件の数かける勝率かける平均の案件単価を、営業サイクルの日数で割った値です。一日あたりに生み出される売上の目安を表します。
四つの要素があるので、改善の打ち手も四つあります。案件の数を増やす。勝率を上げる。単価を上げる。サイクルを短くする。受注率だけを追うと、他の三つが見えなくなります。
なぜこの問題が起きるのか
受注率だけでは、営業の力は測れない
受注率が高くても、勝てそうな案件だけを選んで、案件の数が少ないなら、売上は小さい。単価が低い案件ばかり取っていれば、同じ件数でも売上は伸びない。そして、サイクルが長ければ、売上が立つまでの時間がかかり、その間の人件費もかさみます。
つまり、受注率は、営業の効率の一面にすぎません。四つの要素を同時に見て、どこが全体の足を引っ張っているかを特定する必要があります。
経営視点で見ると何が問題なのか
時間も、資本である
経営では、資本の回転率という考え方があります。同じ資本でも、早く回転するほど、同じ期間に生み出す収益が増えます。営業でも、案件を早く受注に導くことは、営業の時間という資本の回転を速めることです。
サイクルが短くなると、同じ営業が、同じ期間で、より多くの案件を扱えます。しかも、案件が長引くほど、競合の登場や、顧客の状況の変化といった、失注のリスクも高まります。サイクルの短縮は、勝率の向上にも寄与します。
四つの要素のうち、どれを動かすかは、投資の費用と効果で決まります。案件の数を増やすには、リード獲得への投資が必要です。勝率を上げるには、教育や提案の質の向上。単価を上げるには、価値提案の見直し。サイクルを短縮するには、プロセスの整備です。それぞれに必要な費用と、得られる効果を比べて、優先順位をつけてください。
トップセールスはどう考えるか
サイクルを短くする技術
トップセールスは、案件のスピードを管理します。最初の面談で、顧客に、導入までの道筋を示します。誰が決めて、いつ決めるのか。そのために、いつまでに何をするのか。顧客と一緒に、日付つきの計画を作り、双方の宿題を明確にします。
彼らは、停滞を許しません。次の約束が曖昧なまま、時間が過ぎることを避け、止まっている案件には、理由を確かめ、状況が変わらなければ、優先度を下げます。顧客が動かない案件に、時間を使い続けることは、サイクルを伸ばし、他の案件の速度も落とします。
営業責任者はどう設計するか
チームで、売上の速度を上げる
- まず、四つの要素を、案件の区分ごとに計測します。エンタープライズとSMBでは、水準がまったく違うからです。
- 次に、最も改善の余地が大きい要素を、一つ選びます。全部を同時に動かそうとしないことです。
- 三つ目に、サイクルの短縮のために、顧客と合意する共同の行動計画を、標準の様式にします。
- 四つ目に、停滞している案件のルールを決めます。一定の期間、動きがない案件は、確度を下げ、会議で扱いを決めます。
- 最後に、四半期ごとに、四つの要素の変化を振り返ります。
数字で分解する
計算を、具体的にやってみます。数字は説明用です。案件が四十件、勝率が二十パーセント、平均の案件単価が五百万円、営業サイクルが八十日とします。四十かける〇・二かける五百万円を八十で割ると、一日あたり五十万円です。
次に、四つの要素を、それぞれ一割だけ改善したときの効果を見ます。案件の数を一割増やすと、速度は一割増えて五十五万円。勝率を一割改善しても一割増えます。単価を一割上げても同じです。サイクルを一割短縮すると、八十日が七十二日になり、速度は約十一パーセント増えます。
つまり、一割という改善の幅が同じなら、どの要素でも効果は近いのです。違いは、一割の改善に必要な費用と難しさです。リード獲得への投資が難しい時期は、サイクルの短縮や勝率に。サイクルがすでに短い組織なら、案件の数や単価に、というように、投資の優先順位を決めます。
| 要素 | 現状 | 一割改善後 | 一日あたりの売上 |
|---|---|---|---|
| 案件の数 | 40件 | 44件 | 55万円 |
| 勝率 | 20パーセント | 22パーセント | 55万円 |
| 平均の案件単価 | 500万円 | 550万円 | 55万円 |
| 営業サイクル | 80日 | 72日 | 約55.6万円 |
| 現状の合計 | — | — | 50万円 |
編集部の整理です。数値は説明用です。
ここでは、セールスベロシティの四つの要素を、それぞれ一割だけ改善したときの効果を示します。現状は、案件が四十件、勝率が二十パーセント、平均単価が五百万円、サイクルが八十日で、一日あたり五十万円です。
案件の数、勝率、単価のどれか一つを一割改善すると、一日あたり五十五万円になります。サイクルを七十二日に短縮すると、約五十五万六千円です。改善の幅が同じなら効果は近く、違いは、改善に必要な費用と難しさです。
ケーススタディ
四つの要素に分解する
これは編集部が作った架空の事例で、数値は説明用です。
あるチームは、受注率が高いことを誇っていましたが、売上は伸びませんでした。
四つの要素に分けると、案件の数が少なく、サイクルが長いことが分かりました。勝てる案件だけを慎重に選び、時間をかけて取っていたのです。
そこで、初期の見極めを速くして、確度の低い案件を早く手放すルールにしました。同時に、インサイドセールスとの連携で、案件の数を増やしました。受注率は少し下がりましたが、売上の速度は上がりました。
よくある間違い
- 受注率だけを追い、案件の数とサイクルを見ない。
- エンタープライズとSMBを混ぜて、一つの平均で計算している。
- 停滞した案件を放置して、サイクルを自ら伸ばしている。
- 四つの要素を同時に動かそうとして、何が効いたか分からなくなる。
明日から実行すること
- まず、直近の四半期について、案件の数、勝率、平均単価、営業サイクルを、区分ごとに集計してください。
- セールスベロシティを計算して、四つの要素のうち、最も改善しやすいものを一つ選んでください。
- 次に、動いていない案件を洗い出して、扱いを決めてください。
- 主要な案件で、顧客と日付つきの計画を合意する習慣を始めてください。
3分まとめ
三分でまとめます。セールスベロシティは、案件の数、勝率、平均単価を掛けて、営業サイクルで割った値で、売上の速度を表します。受注率は、その一部にすぎません。
時間も資本です。サイクルを短くすれば、同じ営業が、より多くの案件を扱えます。トップセールスは、日付つきの計画で案件の速度を管理し、停滞を許しません。明日は、四つの要素を集計してください。
よくある質問
セールスベロシティは、予測の数字ですか。
厳密な予測ではなく、現状の営業の力を、一つの数字で比べるための目安です。変化を追い、どの要素が効いたかを見るために使います。
案件の区分ごとに、計算すべきですか。
はい。単価やサイクルが大きく違う区分を混ぜると、数字の意味が失われます。区分ごとに計算してください。
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