売上100%達成でも営業組織が危険なケース
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今期の売上の目標を、百パーセント達成した。会議では、拍手が起きる。けれども、その数字の中身を見ると、来期に大きな不安を残していることがあります。
売上の達成は、結果の一つの断面にすぎません。この記事では、目標を達成していても、営業組織が危険な状態にある典型的なケースと、営業責任者が数字の裏側で確認すべきことを、整理します。
まず結論
目標を達成していても、次の五つのどれかに当てはまれば、組織は危険です。一つの大型案件への依存。値引きによる前倒しの受注。来期のパイプラインの不足。一部のトップへの依存。そして、受注の質の低下による解約の増加です。
営業責任者は、達成率に加えて、これらの先行指標を、並べて見てください。達成率は、結果です。結果が良いときほど、先行指標が悪化していても、気づきにくくなります。
なぜこの問題が起きるのか
達成しているのに、危険な五つのケース
一つ目は、集中のリスクです。達成した金額の大きな部分が、一つか二つの大型案件に頼っている場合、その案件が延期や失注になれば、一気に未達になります。結果としての達成は、運の要素が大きかったかもしれません。
二つ目は、値引きによる前倒しです。期末に向けて、値引きで受注を前倒しすると、数字は達成しますが、粗利が削られ、来期の案件を食っています。顧客に、値引きを待つ習慣もつきます。
三つ目は、来期のパイプラインの不足です。今期の案件を刈り取ることに集中して、新しい案件を作る活動が止まっていると、来期の初めに、数字が落ち込みます。
四つ目は、トップへの依存です。達成が、一部の営業の突出した成果によるもので、他のメンバーの多くが未達なら、その人が抜けた途端に、組織の力が大きく落ちます。
五つ目は、受注の質の低下です。数字を達成するために、顧客との適合が低い案件まで取ると、導入後の不満や解約が増え、将来の売上と評判を損ないます。
経営視点で見ると何が問題なのか
売上の質と、持続可能性
経営では、売上の量だけでなく、質を見ます。質とは、粗利率、継続性、顧客の分散、そして予測可能性です。粗利率が低い売上、継続しない売上、特定の顧客に集中した売上は、同じ金額でも、価値が低い。
もう一つ、重要な概念が、売上の予測可能性です。経営は、採用、投資、資金繰りの計画を、売上の予測に基づいて立てます。達成率が高くても、予測と実績の差が大きいなら、経営の意思決定が不安定になります。予測の精度を上げることも、営業の重要な責任です。
また、短期の達成が、長期の価値を削る場合があります。値引きや、不適合な顧客の獲得は、短期の数字を作りますが、将来の顧客生涯価値を、下げます。営業の評価に、短期の金額だけでなく、質を入れることが、持続可能な成長の条件です。
トップセールスはどう考えるか
達成した直後に、種をまく
トップセールスは、期の終盤に、次の期の種をまきます。目標を達成することが見えてきたら、刈り取りに満足せず、次の期のパイプラインを作る活動に、時間を使います。
彼らは、期末の値引きの誘惑にも慎重です。値引きで取った案件は、その期の数字を作りますが、次の期の売上を前倒しで使っただけ、ということを知っています。値引きを使うなら、その分、何を得るかを明確にします。契約の期間を長くする、事例への協力を得る、追加の取引を約束してもらう、といった条件を交換します。
営業責任者はどう設計するか
達成の裏側で、毎月確認する先行指標
- まず、来期のパイプラインの量です。目標に対して、期待値ベースで十分な見込みがあるかを見ます。
- 次に、受注の金額の分布です。上位の案件への集中度を見ます。
- 三つ目に、値引きの率と、粗利率の推移です。期末に向けて悪化していないかを確認します。
- 四つ目に、メンバーごとの達成の分布です。一部への依存度を見ます。
- 五つ目に、新規の受注と、既存顧客からの拡大の比率、そして、受注後の早期の解約の動きです。
- 最後に、売上の予測と実績の差です。予測の精度を毎月記録します。
数字で分解する
数字の中身を、具体的に見てみましょう。数字は説明用です。年間の目標が一億円で、実績が一億円、達成率は百パーセントとします。ところが、内訳を見ると、上位の二件の案件が合計で三千五百万円、つまり三十五パーセントを占めています。さらに、期末の三か月で、値引きを平均して十五パーセント行い、粗利率は、年初の七十パーセントから、六十パーセントに低下しています。
来期の見込みを見ると、期待値ベースのパイプラインが、目標の一億二千万円に対して、六千万円しかありません。つまり、目標の半分です。さらに、メンバーが十人いて、達成したのは三人だけです。
達成率という一つの数字では、満点です。ところが、集中度、粗利率、来期のパイプライン、達成の分布という四つの先行指標で見ると、いずれも警告の状態です。これが、達成しているのに危険、という状態です。
| 指標 | 数値 | 見方 |
|---|---|---|
| 年間の達成率 | 100パーセント | 結果は良好 |
| 上位2件の占める割合 | 35パーセント | 集中のリスク |
| 粗利率 | 70パーセントから60パーセントへ低下 | 値引きの影響 |
| 来期のパイプライン(期待値) | 6000万円(目標1億2000万円の半分) | 不足 |
| 達成したメンバー | 10人中3人 | 一部への依存 |
編集部の整理です。数値は説明用です。
ここでは、達成率が百パーセントでも危険な例を示します。年間の達成率は百パーセントですが、上位の二件が全体の三十五パーセントを占めており、集中のリスクがあります。
粗利率は、値引きの影響で七十パーセントから六十パーセントに低下しています。来期のパイプラインは、期待値で六千万円と、目標の半分です。達成したメンバーは十人中三人で、一部への依存も見られます。達成率という一つの数字では見えない、四つの警告が並んでいます。
ケーススタディ
数字の中身を確認する
これは編集部が作った架空の事例で、数値は説明用です。
ある営業組織は、年度の目標を百パーセント達成しました。ところが、翌期の最初の四半期で、売上が大きく落ち込みました。
振り返ると、達成した売上の三割が、期末に値引きで前倒しした案件でした。しかも、達成の半分以上が、二人の営業によるものでした。期の終盤は、刈り取りに集中していたため、新しい案件の創出が止まっていました。
そこで、達成率に加えて、来期のパイプライン、値引き率、メンバーごとの分布を、毎月、会議で見る仕組みにしました。期末の値引きには、承認と、見返りの条件を設けました。
よくある間違い
- 達成率だけを見て、結果を評価している。
- 期末の値引きを、見返りなしで認めている。
- 期末の刈り取りに集中して、次の期のパイプラインを作る活動が止まる。
- トップの成果に頼り、他のメンバーの底上げを後回しにする。
- 数字を達成するために、顧客との適合が低い案件まで取る。
明日から実行すること
- まず、今期の達成の内訳を、上位の案件への集中度、値引き率、メンバーの分布の三つで見直してください。
- 次に、来期のパイプラインを、期待値ベースで計算して、目標と比べてください。
- 期末の値引きに、承認と見返りの条件を設けるルールを、決めてください。
- 毎月の会議で、達成率と並べて、先行指標を見る様式を作ってください。
3分まとめ
三分でまとめます。目標を達成していても、組織は危険かもしれません。一つの案件への依存、値引きによる前倒し、来期のパイプラインの不足、トップへの依存、受注の質の低下。この五つが典型です。
売上は、量だけでなく、質と持続可能性で見ます。トップセールスは、期の終盤に、次の期の種をまきます。営業責任者は、達成率と並べて、先行指標を毎月見てください。明日は、今期の達成の内訳を確認してください。
よくある質問
値引きは、全面的に禁止すべきですか。
禁止ではなく、承認と見返りの条件を設けます。契約期間の延長、事例への協力、追加取引の約束など、何を得るかを明確にして、使ってください。
来期のパイプラインは、いつから見ればよいですか。
期の途中から、毎月見るのが理想です。期末に近づいてから見ても、案件を作るには遅いからです。
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